Nippoku Style | ポツンと置かれている一台の車
 
 本校は3月27日(日)いっぱい、生徒を自宅待機にしました。そのため、朝学校にきても生徒の元気な声は全く聞こえません。職員もガソリンが手に入らず、自宅で待機している者もおり、学校全体が深閑としています。
 そんな静けさの中、一台の車がポツンと置かれています。この車の持ち主は、3月11日(金)に本校の格技場へ避難してこられたました。しかし、勤務先から呼び出しがあり、その方は避難所から勤務先に出かけたまま、未だに戻られません。持ち主の家族も一緒に避難していましたが、既に自宅に戻られました。車のキーを本人が持ったまま勤務先に出かけてしまったので、持ち主が取りに来るまで、本校でお預かりしているのです。車の持ち主は医療系のお仕事に従事されているようですが、きっと、自分の身体をかえりみず、被災者のために全力を尽くされていることと推察します。
 写真の左下に写っている赤いコーンポストと青いバケツ。ここから、トイレ用の水を汲んでいます。本来は井戸水を利用した散水栓で飲料には適しませんが、トイレ用であれば何の問題もありません。電気が通ったので、この散水栓が利用できるようになり、大変助かりました。
 水洗トイレは、水がないとどうしようもありません。そのため、生徒達が泊まった時や避難所として多くの地元の皆さんが格技場に泊まっていた時には、本校職員や泊まっている生徒の中の有志が、さらには市役所の職員の方が、近くのわき水を汲みに行ったり、本校の裏手にある井戸から水を人力で汲み上げたりしながら、トイレの水を確保していました。
 現在、担任の先生が中心となり、生徒一人一人の状況把握に努めていますが、被災している生徒がいないか心配です。その電話の中で、本校のホームページを御覧になった何人かの保護者の方から、地震発生時の教職員の対応にお礼の言葉をいただいたということを担任の先生から聞き、職員の働きに感謝してくれている保護者の方の気持ちを嬉しく受け取りました。
 また、先ほど近くのKストアーに、自分と職員の昼食を買いに出かけた時、面識のない方から「北高の先生ですよね。避難所でお世話になりました。ありがとうございました。皆さん親切で、本当に助かりましたよ。」と声をかけられました。今までの疲れがいっぺんに吹き飛んでしまうほど、嬉しい言葉でした。
 ライフラインのうち、電気は復旧しましたが、水道はまだです。しかし、そのことに不満を漏らしてはなりません。多くの皆さんが、懸命に復旧作業をしてくれていることは間違いないのですから。それに、放射能の恐怖に怯えながら避難所生活をしているたくさんの方や、暖房もなく、寒い避難所で配給されたおにぎり一個を何人かで分けながら生活している多くの方もいるのです。さらに、未だに自分の車を取りに来られないまま、仕事を続けている方もいるのですから。


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